木 下 謙 次 郎『美 味 求 真』 ─ 食 を 探 究 す る 大 正 の 名 著
小学校 家庭 第5学年 食 文 化和 食食 育 目安 25 分
学習のめあて
- 木 下 謙 次 郎 と『美 味 求 真』 を 知 る
- 食 文 化 の 多 様 性 を 学 ぶ
- 「美 味 = 真 理」 と い う 食 哲 学 を 体 験
本文
「美 味 を 求 め て 真 を 知 る」
大 正 14 年 (1925)、 一 冊 の 巨 大 な 本 が 出 版 さ れ た。 題 名 は『美 味 求 真 (び み き ゅ う し ん)』。 著 者 は 衆 議 院 議 員 ・ 木 下 謙 次 郎 (1869–1947)。
本 の 厚 さ は 1400 ペ ー ジ。 内 容 は ─ 日 本 ・ 中 国 ・ 西 洋 の 料 理 と 食 材 の 詳 細 研 究。 各 食 材 の 旬 ・ 産 地 ・ 調 理 法 ・ 栄 養 ・ 歴 史 が、 学 術 書 と し て 整 理 さ れ て い る。
題 名 の 意 味 は ─ 「美 味 (お い し さ) を 求 め て、 真 理 を 知 る」。 食 を 単 な る 楽 し み で な く、 真 理 探 究 の 一 つ と し て 捉 え る 思 想 が 込 め ら れ て い る。
木 下 謙 次 郎 ─ 政 治 家 で あ り 食 通 で あ る
木 下 は 1869 年 大 分 県 出 身。 帝 国 大 学 法 学 部 卒。 内 務 官 僚 と し て 各 県 の 知 事 を 歴 任 後、 衆 議 院 議 員 を 4 期 務 め た。 農 政 ・ 食 糧 政 策 の 専 門 家 で も あ っ た。
公 務 の 傍 ら、 木 下 は 食 文 化 に 異 常 な ま で の 情 熱 を 注 い だ。 日 本 各 地・中 国・東 南 ア ジ ア を 旅 し、 食 材 ・ 料 理 を 自 ら 調 査。 そ れ を ま と め た の が『美 味 求 真』 で あ る。
五 味 と 旬 ─ 和 食 の 基 本
木 下 は『美 味 求 真』 で、 食 の「五 味」 を 重 視 し た。
- 甘 (あ ま) ─ 砂 糖、 蜂 蜜、 米
- 鹹 (し お か ら い) ─ 塩、 醤 油、 味 噌
- 酸 (す) ─ 酢、 梅 干 し、 柑 橘
- 苦 (に が) ─ 茶、 ゴ ー ヤ、 蕗
- 辛 (か ら) ─ 唐 辛 子、 山 椒、 大 蒜
こ の 五 味 を バ ラ ン ス よ く 取 り 入 れ る の が、 和 食 の 基 本 で あ る (現 代 で は「う ま 味」 が 加 わ り 五 つ の 基 本 味 と さ れ る)。
旬 ─ 季 節 を 食 べ る
木 下 が 強 調 し た も う 一 つ の 概 念 は 「旬 (し ゅ ん)」 ─ 食 材 が 最 も 美 味 し い 時 期。
- 春 ─ 筍 (た け の こ)、 菜 の 花、 蕗 (ふ き)、 山 菜
- 夏 ─ 鮎、 茄 子、 胡 瓜、 鰻
- 秋 ─ 松 茸、 秋 刀 魚、 栗、 柿
- 冬 ─ 牡 蠣、 蕪、 鰤、 大 根
「同 じ 食 材 で も、 旬 と そ う で な い 時 で は 味 が 全 く 違 う」 ─ 木 下 は 旬 を 大 切 に す る 和 食 文 化 を、 科 学 的 ・ 文 化 的 に 整 理 し て 後 世 に 伝 え た。
北 大 路 魯 山 人 ら 食 通 へ の 影 響
『美 味 求 真』 は 出 版 直 後 か ら、 日 本 の 食 通 ・ 料 理 人 に 大 き な 影 響 を 与 え た。
特 に 北 大 路 魯 山 人 (1883–1959) ─ 篆 刻 家・陶 芸 家 で あ り な が ら、 日 本 屈 指 の 食 通 と し て 知 ら れ る 人 物 ─ は『美 味 求 真』 を 高 く 評 価 し、 自 ら も 食 文 化 を 追 究 し た。 漫 画『美 味 し ん ぼ』 の 海 原 雄 山 の モ デ ル と さ れ る 魯 山 人 の 系 譜 は、 木 下 か ら 続 い て い る。
食 育 ─ 木 下 か ら 君 へ
現 代 の 「食 育 (し ょ く い く)」 ─ 食 を 通 し て 健 康 ・ 文 化 ・ 環 境 を 学 ぶ 教 育 ─ の 思 想 は、 明 治 ~ 大 正 期 の 木 下 謙 次 郎 ・ 村 井 弦 斎 ら の 食 文 化 著 作 ま で 遡 る。
小 5 家 庭 科 で 「食 」 を 学 ぶ 時、 単 に 栄 養 素 や 調 理 法 を 暗 記 す る だ け で な く、 食 が 文 化・ 歴 史・哲 学 と 結 び つ く こ と を 知 っ て 欲 し い。
結 び ─ 君 の「美 味 求 真」 を 始 め よ う
「美 味 を 求 め て 真 を 知 る」 ─ こ の 言 葉 を 心 に、 今 日 の 給 食 を 食 べ て み よ う。 こ の 食 材 は ど こ で 採 れ た? 旬 は? 五 味 の ど れ?
食 を 楽 し む こ と が、 文 化 と 真 理 を 学 ぶ こ と に な る。 木 下 が 100 年 前 に 説 い た 思 想 は、 現 代 の 君 に も 通 じ る。
語句の意味
各見出し語をクリックすると、外部辞書で詳しい意味を調べられます。 ※ Wiktionary について
- 木 下 謙 次 郎 (き の し た け ん じ ろ う) K 1869–1947。 大 分 県 出 身。 政 治 家・農 政 家 で あ り な が ら 食 通 で 知 ら れ る。 衆 議 院 議 員 4 期。 食 文 化 研 究 に も 熱 心 で、 1925 年『美 味 求 真』 出 版。 続 編 ・ 三 編 も 刊 行。 後 の 北 大 路 魯 山 人 ・ 谷 崎 潤 一 郎 ら 食 通 文 化 に 大 き な 影 響。
- 美 味 求 真 (び み き ゅ う し ん) K 「美 味 (お い し さ) を 求 め、 真 理 を 知 る」 の 意。 木 下 が 1925 年 に 出 版 し た 食 文 化 大 著。 日 本 料 理・中 国 料 理・西 洋 料 理・食 材・調 理 技 法・食 史 を 網 羅。 「日 本 食 文 化 の バ イ ブ ル」 と 呼 ば れ る 古 典 で、 1400 ペ ー ジ を 超 え る 大 著。
- 和 食 (わ し ょ く) K 日 本 の 伝 統 的 食 文 化。 2013 年 ユ ネ ス コ 無 形 文 化 遺 産 登 録。 一 汁 三 菜 を 基 本 と し、 米 ・ 味 噌 汁 ・ 主 菜 ・ 副 菜 で 構 成。 旬 を 大 切 に し、 季 節 ・ 行 事 と 結 び つ く 食 文 化。
- 五 大 栄 養 素 (ご だ い え い よ う そ) K 小 5 家 庭 科 で 学 ぶ 栄 養 素 5 種 ─ 炭 水 化 物・タ ン パ ク 質・脂 肪・無 機 質 (ミ ネ ラ ル)・ビ タ ミ ン。 健 康 な 生 活 の 為 に バ ラ ン ス よ く 摂 取 が 必 要。 木 下 の 時 代 に は ま だ ビ タ ミ ン の 発 見 が 浅 か っ た が、 食 材 の 役 割 と し て は 直 観 的 に 理 解 さ れ て い た。
- 五 味 (ご み) K 食 の 五 つ の 基 本 味 ─ 甘 ・ 鹹 (し お か ら い) ・ 酸 ・ 苦 ・ 辛。 中 国 古 来 の 分 類。 木 下 は『美 味 求 真』 で こ の 五 味 の バ ラ ン ス を 重 視。 後 に「う ま 味」 (1908 年 池 田 菊 苗 発 見) が 加 わ り 五 つ の 基 本 味 と さ れ る (旧 来 の「辛」 を 除 い て)。
- 北 大 路 魯 山 人 (き た お う じ ろ さ ん じ ん) K 1883–1959。 篆 刻 家・陶 芸 家・書 家・料 理 人。 京 都 出 身。「食 通」 と し て 名 高 い。 木 下 謙 次 郎『美 味 求 真』 を 高 く 評 価 し、 自 ら も 食 文 化 を 追 究。 漫 画『美 味 し ん ぼ』 の 海 原 雄 山 の モ デ ル と さ れ る。
- 旬 (し ゅ ん) K 食 材 が 最 も 美 味 し い 時 期。 春 ─ 筍 ・ 菜 の 花、 夏 ─ 鮎 ・ 茄 子、 秋 ─ 松 茸 ・ 秋 刀 魚、 冬 ─ 牡 蠣 ・ 蕪。 旬 を 大 切 に す る の が 和 食 の 特 徴。 木 下 は『美 味 求 真』 で 旬 を 詳 細 に 解 説。
考えてみよう
- 「美 味 を 求 め て 真 を 知 る」 と い う 題 か ら、 食 と 学 問 ・ 真 理 の 関 係 を 考 え ま し ょ う。
- 君 が 一 番 好 き な 料 理 は 何 で す か? そ の 食 材 の 旬・栄 養・歴 史 を 調 べ て み ま し ょ う。
- 和 食 が 2013 年 ユ ネ ス コ 無 形 文 化 遺 産 に な っ た 理 由 を 想 像 し て み ま し ょ う。
- 木 下 が「政 治 家・食 通」 の 二 役 を 果 た し た こ と か ら、 ど ん な 生 き 方 を 学 び ま す か?
指導要領との対応
このページは、文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」家庭 第5学年の 以下の指導事項を意識して編集しています。
- 小5家庭 — 日 本 の 食 文 化 を 知 り、 五 大 栄 養 素 と 食 材 を 学 ぶ
※ 文部科学省告示の本文ではなく、編集者による要旨の言い換えです。 正確な指導事項は文部科学省の公式資料を参照してください。
指導案 教員向け・授業展開の例
小5 家 庭 科「食 と 文 化」 単 元 で、 大 正 期 の 食 文 化 大 著 を 紹 介。 食 を 単 な る 栄 養 で な く、 文 化 ・ 歴 史 ・ 哲 学 と し て 捉 え る 視 点 を 学 ぶ。
指導目標
- 木 下 謙 次 郎 と『美 味 求 真』 を 知 る
- 食 文 化 の 多 様 性 を 体 験
- 自 分 の 好 き な 食 を 探 究
授業の流れ
- 10分 木 下 の 略 歴・『美 味 求 真』 紹 介
- 15分 五 味 ・ 旬 ・ 和 食 の 基 本 を 解 説
- 10分 「自 分 の 好 き な 食」 を ワ ー ク シ ー ト で 探 究
- 10分 ク ラ ス で 旬 ・ 五 味 を 共 有
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出典・ライセンス
- 原文: 木下謙次郎 (きのした けんじろう)「木 下 謙 次 郎『美 味 求 真』 ─ 食 を 探 究 す る 大 正 の 名 著」(1925年)
- 入力テキスト: 国立国会図書館デジタルコレクション / 木下謙次郎『美味求真』 (底本:木 下 謙 次 郎『美 味 求 真 (び み き ゅ う し ん)』(大 正 14 年・1925 出 版)。 衆 議 院 議 員・農 林 政 治 家 で あ り な が ら、 約 1400 ペ ー ジ の 食 文 化 大 著 を 著 す。 日 本 ・ 中 国 ・ 西 洋 の 料 理 と 食 材 を 詳 細 に 研 究 し、 北 大 路 魯 山 人 ・ 食 通 文 化 に も 影 響 を 与 え た 古 典。)
- 原文の権利: パブリックドメイン
- 編集・語注・発問・解説: CC BY 4.0 © project_procopios contributors