竹 (たけ) — 萩 原 朔 太 郎
小学校 国語 第3学年 詩・歌B 読むこと 目安 15 分
学習のめあて
- 萩 原 朔 太 郎 の 詩 を 原 文 で 読 む
- 「真 直 ぐ に 伸 び る」 イ メ ー ジ を 体 感 す る
- リ フ レ イ ン と オ ノ マ ト ペ の 効 果 を 理 解 す る
本文
竹 (萩 原 朔 太 郎)
光る地面に竹が生え、
青竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より繊毛が生え、
かすかにけぶる繊毛が生え、
かすかにふるえ。かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まっしぐらに竹が生え、
こおれる節ぶしりんりんと、
青空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。
げ ん だ い ご に な お す と
日 の 光 で 光 る 地 面 か ら、 竹 が 生 え て く る。
若 く 青 い 竹 が 生 え て く る。
地 面 の 下 で は、 竹 の 根 が 生 え て い る。
根 は だ ん だ ん 細 く 細 く な っ て い き、
根 の 先 か ら 繊 毛 (せ ん も う、 細 い 毛) が 生 え て い る。
か す か に 煙 (け む) る よ う に 繊 毛 が 生 え、
か す か に 震 (ふ る) え て い る。
硬 (か た) い 地 面 か ら、 竹 が 生 え て く る。
地 面 の 上 に 鋭 (す る ど) く 竹 が 生 え る。
ま っ し ぐ ら に 竹 が 生 え る。
凍 (こ お) っ た よ う に 引 き 締 ま っ た 節 (ふ し) を、 リ ン リ ン と 振 動 さ せ な が ら、
青 空 の も と に 竹 が 生 え る。
竹、 竹、 竹 が、 生 え る!
解 説 ─ 「生 え る」 と い う 動 詞 の 連 打
こ の 詩 で 最 も 印 象 的 な の は、 「生 え る」 と い う 動 詞 が 何 度 も 繰 り 返 さ れ る こ と で あ る。
12 行 の 中 で、 「生 え る」 「生 え」 が 合 計 約 10 回 出 て く る。
こ の 連 打 が、 「竹 が ど ん ど ん 伸 び て い く 生 命 力」 を、 読 む 者 の 心 に 焼 き 付 け る。
地 下 か ら 空 へ ─ 縦 の 構 造
詩 は、 縦 方 向 の 視 線 を 描 く。
- 地 上 ─ 青 竹 が 生 え る
- 地 下 1 段 目 ─ 竹 の 根 が 生 え る
- 地 下 2 段 目 ─ 根 の 先 の 繊 毛 が 生 え る
- 地 上 ・ 再 び ─ ま っ し ぐ ら に 竹 が 上 へ 伸 び る
- 青 空 の も と ─ 竹 が 空 を 突 く
詩 人 の 眼 は、 地 下 の 細 か い 繊 毛 か ら、 地 上 の 鋭 い 青 竹、 そ し て 青 空 ま で を、 一 気 に 縦 に 貫 く。
そ の 動 き が、 詩 全 体 に 「上 へ、 上 へ」 と い う 力 強 い 方 向 性 を 与 え る。
萩 原 朔 太 郎 と い う 詩 人
萩 原 朔 太 郎 (1886–1942) は、 群 馬 県 前 橋 出 身。
彼 の 第 一 詩 集 『月 に 吠 え る』 (1917) は、 日 本 近 代 詩 の 出 発 点 と 言 わ れ る。
そ れ ま で の 日 本 の 詩 は、 文 語 体 (古 い 言 葉) で 書 か れ る こ と が 多 か っ た。
朔 太 郎 は、 こ れ を 口 語 (話 し 言 葉) に 切 り 替 え、 自 由 な 形 で 詩 を 書 い た。
本 詩 「竹」 も、 口 語 と 古 風 な 語 (「か た き」「こ お れ る」 な ど) を 混 ぜ な が ら、 全 体 と し て 強 い リ ズ ム を 作 る。
こ の 「新 し い 詩 の 言 葉」 を 確 立 し た こ と で、 朔 太 郎 は 「日 本 近 代 詩 の 父」 と 呼 ば れ る。
「し ん し ん と」 と い う 沈 黙 と 連 動
詩 全 体 に は、 「し ん し ん と」 と い う 沈 黙 を 感 じ さ せ る リ ズ ム が あ る。
竹 は、 派 手 な 音 を 立 て て 伸 び る わ け で は な い。 だ が、 確 か に、 静 か に、 だ が 強 く 伸 び て い く。
こ の 「静 か な 強 さ」 が、 「し ん し ん と」 と い う リ ズ ム に 表 れ る。
そ し て 詩 の 最 後、 「竹、 竹、 竹 が 生 え!」 で、 そ の 沈 黙 が 一 気 に 解 放 さ れ る。
君 も 自 然 物 を 詩 に し て み よ う
身 近 な 自 然 物 (花・木・草・石・水 ─ 何 で も) を 一 つ 選 ん で、 朔 太 郎 の よ う に 詩 に し て み よ う。
- 動 詞 を 何 度 も 繰 り 返 す (例 ─ 「咲 く、 咲 く、 咲 く」)
- 地 下 か ら 空 ま で の 縦 の 動 き を 描 く
- オ ノ マ ト ペ を 一 つ 入 れ る
こ の 三 つ を 守 れ ば、 君 だ け の 「竹」 の よ う な 詩 が、 で き あ が る か も し れ な い。
朔 太 郎 が 100 年 前 に 教 え て く れ た 詩 の 力 ─ 動 詞 の 連 打、 縦 の 視 線、 オ ノ マ ト ペ の 響 き ─ を、 君 自 身 の 言 葉 で、 試 し て み よ う。
語句の意味
各見出し語をクリックすると、外部辞書で詳しい意味を調べられます。 ※ Wiktionary について
- 萩 原 朔 太 郎 (は ぎ わ ら さ く た ろ う) K 1886–1942。 群 馬 県 前 橋 出 身。 大 正・昭 和 初 期 の 代 表 的 詩 人。「月 に 吠 え る」(1917)「青 猫」(1923)「氷 島」(1934) な ど。 口 語 自 由 詩 を 確 立 し、 「日 本 近 代 詩 の 父」 と 呼 ば れ る。
- 月 に 吠 え る (つ き に ほ え る) K 萩 原 朔 太 郎 の 第 一 詩 集。 1917 年 (大 正 6 年) 2 月、 感 情 詩 社 刊。 日 本 近 代 口 語 詩 の 出 発 点 と 言 わ れ る。 「竹」「春 の 感 情」 な ど 50 編 余 り。 本 サ イ ト chugaku3 で 関 連 教 材 既 習。
- 竹 (た け) K イ ネ 科 タ ケ 亜 科 の 植 物。 中 が 空 洞 で 真 直 ぐ に 伸 び る。 日 本 で は 古 来 か ら 縁 起 物・建 材・楽 器 (尺 八) な ど と し て 愛 さ れ る。 こ の 詩 で は 「真 直 ぐ に 伸 び る 生 命 力」 の 象 徴。
- 青 竹 (あ お だ け) K 若 い、 緑 色 の 竹。 古 い 竹 は 茶 色 や 黄 色 に 変 化 す る が、 若 い 竹 は 鮮 や か な 青 緑 色。
- し ん し ん と K 静 か に、 し か し 着 実 に。 朔 太 郎 が 使 う オ ノ マ ト ペ。 竹 が 静 か に 伸 び て い く 様 子 を 表 現。
- か た く な に K 「頑 固 に、 揺 ら が ず」 の 古 い 表 現。 竹 が 真 直 ぐ に、 揺 ら ぐ こ と な く 伸 び て い く 姿。
考えてみよう
- 詩 を 声 に 出 し て、 3 回 読 ん で み ま し ょ う。
- 「光 る 地 面 に 竹 が 生 え、 青 竹 が 生 え」 ─ こ の リ フ レ イ ン (繰 り 返 し) の 効 果 は 何 で し ょ う か?
- 「し ん し ん と」 と い う 言 葉 か ら、 ど ん な 印 象 を 受 け ま す か?
- 竹 が「真 直 ぐ に 伸 び る」 こ と を、 朔 太 郎 は な ぜ 詩 に し た の で し ょ う か?
指導案 教員向け・授業展開の例
小3 国 語 の 短 い 詩 教 材。 萩 原 朔 太 郎 の 代 表 詩 の 一 つ 「竹」 を 読 む。 短 い 詩 だ が、 リ フ レ イ ン と オ ノ マ ト ペ で 「真 直 ぐ に 伸 び る 生 命 力」 を 鮮 や か に 描 く。 朔 太 郎 は 中 学 で も 学 ぶ 詩 人 だ が、 こ の 詩 は 小 学 校 で も 親 し み や す い。
指導目標
- 詩 を 声 に 出 し て 読 め る
- リ フ レ イ ン の 効 果 を 体 感 す る
- 自 然 物 (竹) の 生 命 力 を 想 像 す る
授業の流れ
- 5分 竹 の 写 真 や 動 画 を 見 る
- 10分 詩 を 全 員 で 3 回 音 読
- 10分 「し ん し ん と」 の 印 象 を 共 有
- 5分 自 分 の 「真 直 ぐ に 伸 び る」 詩 を 1 連 書 い て み る
発問例・議論のポイント
- 竹 を 見 た こ と が あ り ま す か?
- 「真 直 ぐ」 と は、 ど ん な 様 子?
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出典・ライセンス
- 原文: 萩原朔太郎 (はぎわら さくたろう)「竹 (たけ) — 萩 原 朔 太 郎」(1917年)
- 入力テキスト: 詩集『月に吠える』所収 (大正6年・1917) (底本:萩原朔太郎『月に吠える』(感情詩社、大正6年・1917 年 2 月 刊 所収)。 朔 太 郎 の 第 一 詩 集 の 代 表 作 の 一 つ。 「竹」 が 大 地 か ら 真 直 ぐ に 生 え 上 る 様 子 を、 独 特 の リ ズ ム で 詠 う。)
- 原文の権利: パブリックドメイン
- 編集・語注・発問・解説: CC BY 4.0 © project_procopios contributors