鶴亀算(つるかめざん) の表紙イラスト

鶴亀算(つるかめざん)

小学校 算数 第5学年 古典 数学的活動A 数と計算 目安 25 分

作者
吉田光由『塵劫記』より(1598–1672)
原作発表
1627 年(江戸時代前期(寛永4年初版))
出典
「塵劫記」(じんこうき)
底本:吉田光由『塵劫記』寛永4年(1627年)初版。江戸時代を通じて何度も増補・改訂された日本のベストセラー算術書。問題文は複数の翻刻本(岩波文庫『塵劫記』ほか)に共通する標準的表記による

学習のめあて

  • 江戸時代の人々が、どのように算数を楽しんで解いていたかに触れる
  • 「もし全部が◯◯だったら…」と仮定して考える、和算ならではの論理を体験する
  • 現代の連立方程式の考え方と、和算の解き方が、実は同じことを別の言葉で表していると気づく

本文

『塵劫記』の問題(江戸時代の原問)

つる、かめ あはせて 十五。
あし、あはせて 四十四 あり。
つる、かめ おのおの いくつぞや。

— 吉田光由『塵劫記』より(仮名遣いは現代風に整えた)

現代の言葉でいうと

鶴(つる)と亀(かめ)が、合わせて 15ひき います。

足の数を全部数えると、44本 ありました。

鶴は2本足、亀は4本足です。

鶴と亀は、それぞれ何ひきいるでしょう?

江戸の人々の解き方

江戸時代の和算家は、「もし、全部が鶴だったら」と仮定して考えました。

ステップ1:もし15ひき全部が鶴だったら?

鶴は1羽につき足が2本。だから、15羽ぜんぶが鶴だったら、足の合計は

2 × 15 = 30本

のはずです。

ステップ2:本当の足の数とくらべる

でも実際は44本。だから、

44 − 30 = 14本 足りない

ステップ3:足が足りない分は、亀のせい

亀は鶴より足が 4 − 2 = 2本 多い。

つまり、鶴を1ひき亀におきかえるたびに、足の数は2本ふえる。

14本ふやすには、何ひき亀におきかえればいいか?

14 ÷ 2 = 7ひき ← 亀の数

ステップ4:鶴の数

15 − 7 = 8羽 ← 鶴の数

確かめ算

鶴 8 羽 × 2本 = 16本

亀 7 ひき × 4本 = 28本

合計:16 + 28 = 44本 ✓

頭の数:8 + 7 = 15 ✓

答え:鶴は8羽、亀は7ひき

現代の算数・数学とのつながり

この問題を中学校で習う「連立方程式」を使うと、次のように書けます。

鶴を x 羽、亀を y ひきとすると、
 x + y = 15
 2x + 4y = 44
これを解いて x = 8, y = 7

江戸時代の人々は、「文字」を使う今のような書き方を知らなくても、「もし全部が鶴だったら」という仮定の置きかえで同じ答えにたどりつきました。これは、今でいう「式の変形」の元になる、立派な数学の考え方です。

歴史の窓 — 江戸の数学ブーム

江戸時代の日本では、武士・商人・農民まで、たくさんの人が和算を楽しみました。寺子屋では算術が読み書きと並んで教えられ、自分で解いた難問を絵馬のような板に書いて神社に奉納する「算額(さんがく)」という文化まで生まれました。今でも全国の神社・寺院には、当時の算額が900点以上残っています。

その流行のきっかけのひとつが、この『塵劫記』でした。著者の吉田光由は、もともとはお金の計算や測量、米の量り方など、商人や農民が日常で使う計算をわかりやすく説明する本として書きました。けれども、鶴亀算や鼠算、油分け算のような「謎解き問題」が大人気となり、本は何度も増補・改訂され、ベストセラーとして二百年以上も版を重ねたのです。

明治時代に西洋数学が導入されると、和算はしだいに使われなくなりました。しかし、鶴亀算をはじめとする問題の中には、論理や仮定の考え方を育てる教材として、今も生き続けているものがたくさんあります。

挿絵ギャラリー

物語の場面を、明治・大正期の児童書の挿絵を意識した和風水彩のタッチで表現しました。

  1. 江戸時代の農家の前庭で、鶴と亀が混じって地面に集まり、村人が腕を組んで数を数えている浮世絵風の挿絵。
    江戸時代の農家の庭に集まった鶴と亀を数える人 — 何羽、何匹?頭は合わせていくつ、足は合わせていくつ?
  2. 江戸時代の学者の机の上、和紙に並べられた亀の絵と矢印で鶴に変わっていく図、傍に塵劫記が置かれた挿絵。
    和紙に描かれた鶴亀算の図解 — 「もし全部が亀だったら」を、亀のピクトグラムから鶴に置き換える矢印で表現。
  3. 江戸時代の寺子屋で先生が掛軸を指して教え、子どもたちが算木を並べて計算する浮世絵風の挿絵。
    江戸時代の寺子屋。先生が鶴亀の掛軸を指し、子どもたちが算木を並べて計算する。

語句の意味

各見出し語をクリックすると、外部辞書で詳しい意味を調べられます。 ※ Wiktionary について

  • 塵劫記(じんこうき) K 吉田光由が1627年(寛永4年)にあらわした、日本の算術書。江戸時代を通して何度も増補されながら、商人から農民、子どもまで広く読まれた大ベストセラー。「塵劫」とは仏教用語で「無限に長い時間」のこと。
  • 吉田光由(よしだ・みつよし) K 1598年〜1672年。京都の豪商の家に生まれた、江戸初期の和算家。中国の『算法統宗』を参考にしつつ、日常生活に役立つ問題集として『塵劫記』を編纂した。
  • 和算(わさん) K 江戸時代の日本で独自に発達した数学。鎖国時代の中で、関孝和(せきたかかず)を頂点として高度な水準にまで到達した。
  • 算額(さんがく) K 江戸時代、数学の問題と解答を絵馬のような板に書いて神社や寺に奉納する文化。難問が解けたことを神仏に感謝し、また他の人への挑戦状にもなった。
  • 仮定(かてい) K 「もし〜だったら」と、仮にそうだと考えること。鶴亀算では「もし全部が鶴だったら」と仮定して、現実とのちがいから答えを導く。
  • 連立方程式(れんりつほうていしき) K 「x + y = 15」「2x + 4y = 44」のように、二つ以上の式を同時に満たす答えを求める数学の方法。鶴亀算の現代版。中学校で習う。

考えてみよう

  1. 鶴の足は2本、亀の足は4本。もし鶴と亀が合わせて10匹いて、足が26本あったら、鶴は何羽、亀は何匹でしょう。本文で紹介した「もし全部が鶴だったら」という考え方を使って解いてみましょう。
  2. 練習問題:頭の数 8、足の数 22 のときは?
  3. 練習問題:頭の数 20、足の数 56 のときは?
  4. 現代の算数で使う「文字(x, y)」を使って、頭の数 a、足の数 b のときの鶴・亀の数を式で表してみましょう。
  5. 鶴亀算を解くもう一つの方法に「もし全部が亀だったら」から考える方法もあります。「足は本当は何本多すぎるか」から計算する手順を、自分の言葉で説明してみましょう。
  6. なぜ江戸時代の人々は、鶴亀算のような問題を楽しんで解いたのでしょう。当時の文化背景(商人、寺子屋、算額奉納)と結びつけて考えましょう。

指導要領との対応

このページは、文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」算数 第5学年の 以下の指導事項を意識して編集しています。

  • 数学的活動 (1) — 日常の事象を算数の問題として捉え、見通しをもって問題を解決する活動
  • A(1) 整数の性質 — 数の構成や性質に着目し、数を多面的に捉えることに関わる活動
  • C(1) 比例 — 数量の関係に着目し、関数関係を表現する力を養う基礎

※ 文部科学省告示の本文ではなく、編集者による要旨の言い換えです。 正確な指導事項は文部科学省の公式資料を参照してください。

指導案 教員向け・授業展開の例

「もし全部が鶴だったら」「もし全部が亀だったら」という<strong>仮定</strong>を立てて差を縮めていく考え方は、後の連立方程式や二元一次方程式へつながる重要な基礎。江戸時代の和算書『塵劫記』が、教科書ではなく娯楽として庶民に親しまれていた事実は、算数史の楽しい入口になる。

授業時数
2 単位時間
準備
ワークシート印刷(鶴と亀の絵を描く欄、面積図を描く欄)、動かせる教具(おはじき、ブロックなど)— 「もし全部が鶴だったら」を実物で確認する用

指導目標

  • 「もし全部が鶴だったら」という仮定から差を求め、亀の数を求める考え方を理解する
  • 仮定 → 差 → 求めるものという 3 ステップの論理を、自分の言葉と図で説明できる
  • 同じ問題を「面積図」「式」「文字(中学への接続)」で表すことができる

授業の流れ

  1. 10分 江戸時代の『塵劫記』の紹介。「鶴と亀の足の数」のクイズとして問題を提示。
  2. 15分 「全部が鶴だったら足は何本?」「答え 30 本。でも本当は 44 本ある。14 本足りないのは亀が混じっているから」のスケッチを子どもたちと一緒に作る。
  3. 10分 「亀 1 匹増えると足は 2 本増える」を確認 → 14 ÷ 2 = 7 匹。鶴は 15 − 7 = 8 羽。
  4. 10分 同じ問題を「もし全部が亀だったら」から解いてもらい、結果が同じになることを確認。
  5. 10分 練習問題(頭 20、足 56)を解く。早く終わった子は文字式(a 頭、b 足)にも挑戦。
  6. 5分 振り返り。「仮定して差を求める」というやり方は、今日の問題以外にどんな場面で使えそうかを話し合う。

発問例・議論のポイント

  • 「もし全部が鶴だったら」と仮定するのは、なぜでしょう。最初から正解を当てる方法と比べて、何が便利でしょうか。
  • もし「頭が 15、足が 60」だったら、答えはどうなるか? なぜ答えがおかしくなるかを考えてみましょう。
  • 江戸時代の人々が、算数を「学校の勉強」ではなく「ゲーム・パズル」として楽しんでいたという事実は、現代の私たちにどんなことを示してくれますか。

発展課題

  • 頭の数と足の数を自分で決めて、別の鶴亀算の問題を作ってみる。
  • 面積図(横が頭の数、縦が足の数を表す長方形)で解く方法を試してみる。
  • 他の和算問題(旅人算・鼠算)に挑戦してみる(このサイト内に教材あり)。

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編集部 (本サイト) / 引用 ─ 吉田光由『塵劫記』 (江戸前期 (塵劫記) / 現代)

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出典・ライセンス

  • 原文: 吉田光由『塵劫記』より「鶴亀算(つるかめざん)」(1627年)
  • 入力テキスト: 「塵劫記」(じんこうき) (底本:吉田光由『塵劫記』寛永4年(1627年)初版。江戸時代を通じて何度も増補・改訂された日本のベストセラー算術書。問題文は複数の翻刻本(岩波文庫『塵劫記』ほか)に共通する標準的表記による)
  • 原文の権利: パブリックドメイン
  • 編集・語注・発問・解説: CC BY 4.0 © project_procopios contributors