旅人算(たびびとざん)
小学校 算数 第5学年 古典 数学的活動B 図形と量 目安 25 分
学習のめあて
- 旅人算を通じて、速さ・道のり・時間の関係に親しむ
- 「二人の進む速さの和」「速さの差」という見方で、出会い・追いかけの問題を整理できる
- 単位(里・日)の変換に気をつけて計算する
本文
『塵劫記』の問題(江戸の原問を現代風にアレンジ)
甲(こう)は京(きょう)から、乙(おつ)は大阪(おおさか)から、
同じ日、おたがいに向かいあって旅立った。
京と大阪の道のりは、ちょうど40里(り)。
甲は1日に5里、乙は1日に3里進む。
甲と乙は、何日後にどこで出会うか。
江戸の人々の解き方 — 「速さの和」で考える
ステップ1:1日に二人の距離は何里ちぢまるか
甲が 5里、乙が 3里 進む。たがいに向かいあって進むのだから、二人のあいだの道のりは、1日に
5 + 3 = 8里 ずつ短くなる
ステップ2:40里を埋めるのに何日かかるか
40 ÷ 8 = 5日
ステップ3:出会う場所
5日のあいだに:
- 甲は京から 5 × 5 = 25里 進む
- 乙は大阪から 3 × 5 = 15里 進む
確かめ算:25 + 15 = 40里 ✓
答え:5日後に、京から25里(大阪から15里)の地点で出会う。
図で考える
京 ────────────── 出会いの地点 ──────── 大阪
←—— 甲 25里 ——→ ←— 乙 15里 —→
(1日5里 × 5日) (1日3里 × 5日)
合わせて 40里 を 5日で
仲間の問題:追いかけ算
同じ向きに進む場合は、「速さの差」がポイントになります。
甲は1日に3里、乙は1日に5里進む。
甲が2日先に旅立ち、その後で乙が同じ道を追いかけた。
何日後に乙は甲に追いつくか。
解き方の流れ
- 甲は2日で 3 × 2 = 6里 先に進んでいる
- 乙のほうが1日に 5 − 3 = 2里 多く進む(速さの差)
- 6里の差を埋めるのに 6 ÷ 2 = 3日かかる
答え:3日後に乙は甲に追いつく(乙が出発してから数えて)。
現代の算数とのつながり — 「速さ × 時間 = 道のり」
小学5年生で習う「速さ」の三つの関係式:
| 道のり | = | 速さ × 時間 |
| 速さ | = | 道のり ÷ 時間 |
| 時間 | = | 道のり ÷ 速さ |
旅人算は、この三つの関係を 「二人ぶん」に拡張したもの、と言えます。
- 出会い算:道のり ÷ (速さの和) = 出会うまでの時間
- 追いかけ算:差 ÷ (速さの差) = 追いつくまでの時間
歴史の窓 — 旅と算術
江戸時代の人々は、参勤交代や巡礼、商売のために、現代よりはるかによく歩く生活をしていました。1日に進める距離(5〜10里、つまり20〜40km)を見積もり、旅費と日数を計算することは、商人や役人にとって必須の技術だったのです。
『塵劫記』が旅人算をていねいに解説したのは、こうした実用のためでもありました。けれども問題そのものは、純粋なパズルとしてもおもしろく、寺子屋の子どもから町人まで楽しんで解いていたと伝わります。
語句の意味
- 里(り) 江戸時代の長さの単位。1里 = 36町 = 約3.927キロメートル。約4km と覚えておくと便利。
- 京(きょう)と大阪(おおさか) 江戸時代の主要都市。京(京都)と大阪(おおさか)の実距離は約十二里(48km)。本問では『塵劫記』の流儀にならい、二地点間40里として計算する理論問題として扱う。
- 速さ 単位時間あたりに進む道のり。「一日に5里」「時速60km」のように表す。
- 出会い算(であいざん) 二人が向かい合って進み、出会うまでの時間を求める問題。「二人の速さの和」が鍵。
- 追いかけ算(おいかけざん) 同じ向きに進む二人で、後から出た人が先の人に追いつく時間を求める問題。「二人の速さの差」が鍵。
考えてみよう
- 甲は1日5里、乙は1日3里進みます。40里はなれた二地点から同時に向かいあって出発したとき、何日後に出会いますか。
- 出会うまでに、甲は何里、乙は何里進みましたか。
- 練習問題:60里離れた二地点から、甲が1日6里、乙が1日4里で同時に向かいあって出発しました。何日後に出会いますか。
- 練習問題(追いかけ算):甲は1日3里進みます。甲が先に2日進んだあと、乙が同じ道を追いかけました。乙は1日5里進みます。何日後に追いつきますか。
- 「速さの和」「速さの差」を使い分ける場面を、自分の言葉で説明してみましょう。
- 現代の交通手段で旅人算を考えてみましょう。新幹線(時速270km)と各駅停車(時速60km)が同時に同方向に発車したとき、新幹線は何時間で各駅停車を追いかけて追い抜けますか(同じ路線として)。
指導要領との対応
このページは、文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」算数 第5学年の 以下の指導事項を意識して編集しています。
- 数学的活動 (1) — 日常の事象を算数の問題として捉え、見通しをもって問題を解決する活動
- B(2) 速さ — 速さの意味と表し方、速さ・道のり・時間の関係
- C(1) 比例 — 二つの数量の関係に着目し、変化や対応の特徴を考察する
※ 文部科学省告示の本文ではなく、編集者による要旨の言い換えです。 正確な指導事項は文部科学省の公式資料を参照してください。
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出典・ライセンス
- 原文: 吉田光由『塵劫記』より「旅人算(たびびとざん)」(1627年)
- 入力テキスト: 「塵劫記」(じんこうき) (底本:吉田光由『塵劫記』寛永4年(1627年)初版。問題文は複数の翻刻本(岩波文庫『塵劫記』ほか)に共通する標準的表記による)
- 原文の権利: パブリックドメイン
- 編集・語注・発問・解説: CC BY 4.0 © project_procopios contributors