鶴亀算(つるかめざん)

『塵劫記』の問題(江戸時代の原問)

つる、かめ あはせて 十五。
あし、あはせて 四十四 あり。
つる、かめ おのおの いくつぞや。

— 吉田光由『塵劫記』より(仮名遣いは現代風に整えた)

現代の言葉でいうと

鶴(つる)と亀(かめ)が、合わせて 15ひき います。

足の数を全部数えると、44本 ありました。

鶴は2本足、亀は4本足です。

鶴と亀は、それぞれ何ひきいるでしょう?

江戸の人々の解き方

江戸時代の和算家は、「もし、全部が鶴だったら」と仮定して考えました。

ステップ1:もし15ひき全部が鶴だったら?

鶴は1羽につき足が2本。だから、15羽ぜんぶが鶴だったら、足の合計は

2 × 15 = 30本

のはずです。

ステップ2:本当の足の数とくらべる

でも実際は44本。だから、

44 − 30 = 14本 足りない

ステップ3:足が足りない分は、亀のせい

亀は鶴より足が 4 − 2 = 2本 多い。

つまり、鶴を1ひき亀におきかえるたびに、足の数は2本ふえる。

14本ふやすには、何ひき亀におきかえればいいか?

14 ÷ 2 = 7ひき ← 亀の数

ステップ4:鶴の数

15 − 7 = 8羽 ← 鶴の数

確かめ算

鶴 8 羽 × 2本 = 16本

亀 7 ひき × 4本 = 28本

合計:16 + 28 = 44本 ✓

頭の数:8 + 7 = 15 ✓

答え:鶴は8羽、亀は7ひき

現代の算数・数学とのつながり

この問題を中学校で習う「連立方程式」を使うと、次のように書けます。

鶴を x 羽、亀を y ひきとすると、
 x + y = 15
 2x + 4y = 44
これを解いて x = 8, y = 7

江戸時代の人々は、「文字」を使う今のような書き方を知らなくても、「もし全部が鶴だったら」という仮定の置きかえで同じ答えにたどりつきました。これは、今でいう「式の変形」の元になる、立派な数学の考え方です。

歴史の窓 — 江戸の数学ブーム

江戸時代の日本では、武士・商人・農民まで、たくさんの人が和算を楽しみました。寺子屋では算術が読み書きと並んで教えられ、自分で解いた難問を絵馬のような板に書いて神社に奉納する「算額(さんがく)」という文化まで生まれました。今でも全国の神社・寺院には、当時の算額が900点以上残っています。

その流行のきっかけのひとつが、この『塵劫記』でした。著者の吉田光由は、もともとはお金の計算や測量、米の量り方など、商人や農民が日常で使う計算をわかりやすく説明する本として書きました。けれども、鶴亀算や鼠算、油分け算のような「謎解き問題」が大人気となり、本は何度も増補・改訂され、ベストセラーとして二百年以上も版を重ねたのです。

明治時代に西洋数学が導入されると、和算はしだいに使われなくなりました。しかし、鶴亀算をはじめとする問題の中には、論理や仮定の考え方を育てる教材として、今も生き続けているものがたくさんあります。