鼠算(ねずみざん)
小学校 算数 第5学年 古典 数学的活動A 数と計算 目安 20 分
学習のめあて
- 「毎月7倍に増える」という変化のしかたを、表をつくって体感する
- 倍々(指数的)にふえる量が、思った以上に急速に大きくなることを実感する
- 「ねずみ算式に増える」という日本語の表現の由来を知る
本文
『塵劫記』の問題
正月(しょうがつ)に、鼠(ねずみ)の親子 14ひき あり。
父・母 2ひきと、子 12ひき。
2月、この14ひきが、それぞれ 12ひきずつの子を産む。
3月もまた、すべての鼠が同じように子を産む。
このようにして、12月(しわす)には、ねずみは何ひきになるか。
— 吉田光由『塵劫記』より(要約)
問題のしくみを見やすく整える
『塵劫記』の元の文は、「親子14ひき」を 7組のつがい(夫婦) と数えています。つがいが12ひきの子を産むと、子のうち6組がまた新たなつがいになり、翌月にはそれぞれが12ひきずつ産む——という仕組みです。
すこし整理すると、ネズミの数は 毎月7倍ずつふえていくと考えてよい問題になります(親も生き残り、子も次の月にはつがいを組んで産む)。
月ごとに増えるネズミの数を表にしてみる
| 月 | ネズミの数 | 前月の何倍? |
|---|---|---|
| 1月 | 14 | — |
| 2月 | 98 | ×7 |
| 3月 | 686 | ×7 |
| 4月 | 4,802 | ×7 |
| 5月 | 33,614 | ×7 |
| 6月 | 235,298 | ×7 |
| 7月 | 1,647,086 | ×7 |
| 8月 | 11,529,602 | ×7 |
| 9月 | 80,707,214 | ×7 |
| 10月 | 564,950,498 | ×7 |
| 11月 | 3,954,653,486 | ×7 |
| 12月 | 27,682,574,402 | ×7 |
答え
12月のネズミの数は、なんと 276億8257万4402匹!
これは、現在の世界の人口(約80億人)の3倍以上。1月の親子14匹が、わずか11か月でこんな数になってしまいます。
計算の仕組み
毎月7倍にふえるので、12月の数は
14 × 7 × 7 × 7 × 7 × 7 × 7 × 7 × 7 × 7 × 7 × 7
つまり「14 に 7 を 11回かけた」数になります。中学校以降の数学では、これを
14 × 7¹¹(じゅういちじょう)
と書きます。「指数(しすう)」と呼ばれる書き方で、同じ数をくり返しかけ合わせる回数を、小さく上に書くのです。
「ねずみ算式に増える」という日本語
『塵劫記』のこの問題が江戸時代の人々に強い印象を残したため、日本語には今でも 「ねずみ算式に増える」 という表現が残っています。意味は「ものすごい勢いで、倍々にふえていく」。
身の回りには、ねずみ算と同じ仕組みで増えるものがたくさんあります:
- 細菌やウイルスの増え方(条件がそろえば20分で2倍)
- SNSの情報の拡散(10人に伝わる → 100人 → 1,000人 …)
- 銀行の複利の利息(毎年同じ利率を元本にかける)
- 連鎖反応(核分裂、雪崩、トランプの「都合のいい嘘」)
歴史の窓 — 倍々の不思議は世界共通
「倍々にふえると、すぐに巨大な数になる」という驚きは、世界中の数学者を魅了してきました。同じころのインドには「チェス盤と米粒」という有名な物語があります。チェス盤の最初のマスに米1粒、次のマスに2粒、その次に4粒……と、マスごとに倍々にしていくと、64マス目には1,800京(けい)粒もの米が必要になる、というお話です。
江戸の『塵劫記』のねずみ算も、その同じ「倍々の驚き」を、日本人になじみ深いネズミの繁殖力で語ったものでした。
語句の意味
各見出し語をクリックすると、外部辞書で詳しい意味を調べられます。 ※ Wiktionary について
- ねずみ K ここでは、家にすむクマネズミやドブネズミのこと。実際のネズミも繁殖力が高く、1組のつがいが年に数十匹の子を産むことがある。
- つがい K オスとメス、雌雄1組のこと。
- 倍々(ばいばい)に増える K 「2倍 → 4倍 → 8倍 → 16倍 …」のように、同じ倍率を何度もかけて急速に大きくなる増え方。数学では「指数的増加」と呼ぶ。
- 指数(しすう) K 同じ数を何回かけ合わせるかを表す数。たとえば 7×7×7×7 を「7の4乗(7⁴)」と書き、4が指数。中学校で習う。
- 7¹¹(しちのじゅういちじょう) K 7を11回かけ合わせた数。7 × 7 × 7 × … × 7 = 1,977,326,743(約20億)。
考えてみよう
- 本文の表を見て、各月のネズミの数が「前の月の何倍」になっているか確かめましょう。
- もし鼠が「毎月10倍にふえる」としたら、12月にはどれくらいになるでしょう。月ごとの数を計算してみましょう(電卓を使ってOK)。
- 「倍々に増える」例を、身の回りで一つ探してみましょう。(ヒント:折り紙を半分に折り続ける/お年玉を毎月2倍にして残す/インターネットの拡散)
- 実際のネズミは、本当にこんなふうに増え続けるでしょうか。何が「ブレーキ」になるかを想像してみましょう。
- この問題から、「ねずみ算式に」という日本語が生まれました。あなたが知っている「倍々に増えて困ったこと」を一つ挙げてみましょう。
指導要領との対応
このページは、文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」算数 第5学年の 以下の指導事項を意識して編集しています。
- 数学的活動 (1) — 日常の事象を算数の問題として捉え、見通しをもって問題を解決する活動
- A(1) 整数の性質 — 数の構成や性質、変化のしかたに着目する
- C(1) 比例 — 二つの数量の関係に着目し、変化や対応の特徴を考察する/指数的に変化する現象に出会う
※ 文部科学省告示の本文ではなく、編集者による要旨の言い換えです。 正確な指導事項は文部科学省の公式資料を参照してください。
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出典・ライセンス
- 原文: 吉田光由『塵劫記』より「鼠算(ねずみざん)」(1627年)
- 入力テキスト: 「塵劫記」(じんこうき) (底本:吉田光由『塵劫記』寛永4年(1627年)初版。問題文は複数の翻刻本(岩波文庫『塵劫記』ほか)に共通する標準的表記による)
- 原文の権利: パブリックドメイン
- 編集・語注・発問・解説: CC BY 4.0 © project_procopios contributors