『塵劫記』の問題(江戸の原問を現代風にアレンジ)
甲(こう)は京(きょう)から、乙(おつ)は大阪(おおさか)から、
同じ日、おたがいに向かいあって旅立った。
京と大阪の道のりは、ちょうど40里(り)。
甲は1日に5里、乙は1日に3里進む。
甲と乙は、何日後にどこで出会うか。
江戸の人々の解き方 — 「速さの和」で考える
ステップ1:1日に二人の距離は何里ちぢまるか
甲が 5里、乙が 3里 進む。たがいに向かいあって進むのだから、二人のあいだの道のりは、1日に
5 + 3 = 8里 ずつ短くなる
ステップ2:40里を埋めるのに何日かかるか
40 ÷ 8 = 5日
ステップ3:出会う場所
5日のあいだに:
- 甲は京から 5 × 5 = 25里 進む
- 乙は大阪から 3 × 5 = 15里 進む
確かめ算:25 + 15 = 40里 ✓
答え:5日後に、京から25里(大阪から15里)の地点で出会う。
図で考える
京 ────────────── 出会いの地点 ──────── 大阪
←—— 甲 25里 ——→ ←— 乙 15里 —→
(1日5里 × 5日) (1日3里 × 5日)
合わせて 40里 を 5日で
仲間の問題:追いかけ算
同じ向きに進む場合は、「速さの差」がポイントになります。
甲は1日に3里、乙は1日に5里進む。
甲が2日先に旅立ち、その後で乙が同じ道を追いかけた。
何日後に乙は甲に追いつくか。
解き方の流れ
- 甲は2日で 3 × 2 = 6里 先に進んでいる
- 乙のほうが1日に 5 − 3 = 2里 多く進む(速さの差)
- 6里の差を埋めるのに 6 ÷ 2 = 3日かかる
答え:3日後に乙は甲に追いつく(乙が出発してから数えて)。
現代の算数とのつながり — 「速さ × 時間 = 道のり」
小学5年生で習う「速さ」の三つの関係式:
| 道のり | = | 速さ × 時間 |
| 速さ | = | 道のり ÷ 時間 |
| 時間 | = | 道のり ÷ 速さ |
旅人算は、この三つの関係を 「二人ぶん」に拡張したもの、と言えます。
- 出会い算:道のり ÷ (速さの和) = 出会うまでの時間
- 追いかけ算:差 ÷ (速さの差) = 追いつくまでの時間
歴史の窓 — 旅と算術
江戸時代の人々は、参勤交代や巡礼、商売のために、現代よりはるかによく歩く生活をしていました。1日に進める距離(5〜10里、つまり20〜40km)を見積もり、旅費と日数を計算することは、商人や役人にとって必須の技術だったのです。
『塵劫記』が旅人算をていねいに解説したのは、こうした実用のためでもありました。けれども問題そのものは、純粋なパズルとしてもおもしろく、寺子屋の子どもから町人まで楽しんで解いていたと伝わります。