中 谷 宇 吉 郎『雪 と 人 生』 ─ 雪 を 通 し て 自 然 と 人 を 考 え る
中学校 理科 第2学年 気 象随 筆雪 ・ 氷 目安 25 分
学習のめあて
- 中 谷 宇 吉 郎 の 業 績 と 思 想 を 知 る
- 雪 の 結 晶 と 気 象 の 関 係 を 学 ぶ
- 自 然 と 人 間 の 関 係 を 考 え る
本文
「雪 は 天 か ら 送 ら れ た 手 紙 で あ る」
中 谷 宇 吉 郎 (1900–1962) の 最 有 名 な 名 言。 著 書『雪』 (1938 ・ 岩 波 新 書) お よ び 多 数 の 随 筆 で 繰 り 返 し 述 べ ら れ た 言 葉 で あ る。
こ れ は 単 な る 詩 的 比 喩 で は な い。 中 谷 が 確 立 し た 科 学 的 事 実 ─ 雪 の 結 晶 の 形 が、 そ れ が 出 来 た 上 空 の 温 度 ・ 湿 度 を 反 映 し て い る ─ を 表 現 し た 言 葉 で あ る。
本 サ イ ト の chugakurika1/yuki で、 君 は 中 1 編 の 中 谷『雪』 に 触 れ た。 こ こ で は、 戦 後 の 随 筆『雪 と 人 生』 を 通 し て、 中 谷 の 思 想 を よ り 深 く 学 ぼ う。
寺 田 寅 彦 の 弟 子 ─ 「観 察 す る 心」 の 系 譜
中 谷 宇 吉 郎 は、 1900 年 石 川 県 加 賀 市 の 旧 片 山 津 町 出 身。 旧 制 第 四 高 等 学 校 を 経 て 東 京 帝 国 大 学 物 理 学 科 に 入 学。 そ こ で 出 会 っ た 恩 師 が、 寺 田 寅 彦 だ っ た。
寺 田 か ら 中 谷 が 学 ん だ の は、 「日 常 の 不 思 議 を 観 察 す る」 姿 勢 で あ る。 本 サ イ ト の 寺 田 教 材 (茶 碗 の 湯・線 香 花 火・金 平 糖 等) と 系 譜 関 係 に あ る。
1936 年 ・ 世 界 初 ─ 人 工 雪 の 結 晶
昭 和 11 年 (1936) 3 月、 北 海 道 大 学 理 学 部 低 温 室。 中 谷 と 弟 子 た ち は、 世 界 で 初 め て 雪 の 結 晶 を 人 工 的 に 作 っ た。
方 法 は ─ 低 温 (−15 ℃) の 部 屋 で、 ウ サ ギ の 毛 を 一 本 だ け 垂 ら し、 飽 和 水 蒸 気 を 周 囲 に 流 す。 水 蒸 気 が ウ サ ギ の 毛 を 核 と し て 結 晶 化 ─ 美 し い 6 角 形 の 雪 結 晶 が 成 長 し た。
こ れ で、 雪 結 晶 の 形 と 気 象 条 件 (温 度 ・ 水 蒸 気 量) の 関 係 が、 実 験 的 に 完 全 に 解 明 さ れ た。
ナ カ ヤ ダ イ ヤ グ ラ ム ─ 雪 結 晶 の「手 紙」 を 読 む 鍵
中 谷 が 確 立 し た 雪 結 晶 形 と 気 象 条 件 の 関 係 図 は、 「ナ カ ヤ ダ イ ヤ グ ラ ム」 と し て 国 際 雪 氷 学 界 で 認 め ら れ て い る。
- −5 ℃ 付 近 ・ 高 湿 度 ─ 樹 枝 状 (枝 の よ う な) 結 晶
- −15 ℃ 付 近 ─ 美 し い 6 角 板 状 結 晶
- −20 ℃ 以 下 ─ 角 柱 状 ・ 針 状 結 晶
- 低 湿 度 ─ シ ン プ ル な 角 板
- 高 湿 度 ─ 複 雑 な 樹 枝 状 装 飾
つ ま り、 地 上 で 雪 結 晶 を 採 集・観 察 す れ ば、 そ の 結 晶 が 形 成 さ れ た 上 空 数 千 m の 温 度・湿 度 が 推 定 で き る ─ こ れ が「天 か ら 送 ら れ た 手 紙」 の 真 意 で あ る。
『雪 と 人 生』 ─ 戦 後 の 随 筆 集
昭 和 31 年 (1956)、 中 谷 が 戦 後 に 出 版 し た 随 筆 集『雪 と 人 生』。 雪 ・ 氷 の 研 究 と 並 行 し て、 人 間 ・ 社 会 ・ 自 然 と の 関 わ り を 考 え る 文 章 を 集 め た 一 冊。
中 谷 は こ う 書 く ─ 「自 然 を 観 察 す る こ と は、 結 局 自 分 を 観 察 す る こ と で あ る。 雪 結 晶 の 形 か ら 上 空 の 気 象 が 読 め る よ う に、 人 の 生 き 方 か ら も そ の 人 の 内 面 が 読 め る」。
科 学 と 文 学、 自 然 と 人 間 ─ 中 谷 は そ の 境 界 を 自 由 に 行 き 来 し た。
結 び ─ 自 然 か ら 学 ぶ「観 察 す る 心」
中 谷 宇 吉 郎 ─ 寺 田 寅 彦 か ら 受 け 継 い だ「観 察 す る 心」 を、 雪 と い う 一 つ の 自 然 現 象 に 注 い だ 科 学 者・随 筆 家。
冬、 雪 が 降 っ た 日、 君 も「天 か ら の 手 紙」 を 受 け 取 っ て み よ う。 黒 い 布 や 板 の 上 に 雪 を 受 け、 ル ー ペ で 結 晶 を 観 察 す る。 そ の 形 か ら、 数 千 m 上 空 の 気 象 を 想 像 す る ─ こ れ が 中 谷 の 教 え る 科 学 の 楽 し み で あ る。
語句の意味
各見出し語をクリックすると、外部辞書で詳しい意味を調べられます。 ※ Wiktionary について
- 中 谷 宇 吉 郎 (な か や う き ち ろ う) K 1900–1962。 石 川 県 加 賀 市 (旧 片 山 津 町) 出 身。 東 京 帝 大 物 理 学 科 卒 (寺 田 寅 彦 門 下)。 北 海 道 大 学 教 授。 1936 年、 世 界 で 初 め て 雪 の 結 晶 の 人 工 製 作 に 成 功 (低 温 室 で)。「雪 博 士」 と し て 知 ら れ る。 本 サ イ ト chugakurika1/yuki 既 出。
- 雪 の 結 晶 (ゆ き の け っ し ょ う) K 水 蒸 気 が 上 空 (氷 点 下 の 雲) で 直 接 凍 っ て 出 来 る 氷 結 晶。 6 角 形 が 基 本。 形 ・ 大 き さ は 上 空 の 温 度 ・ 湿 度 で 決 ま る た め、 結 晶 か ら 上 空 の 気 象 が 読 み 取 れ る ─ こ れ が 中 谷 の「天 か ら の 手 紙」 の 意 味。
- 「雪 は 天 か ら 送 ら れ た 手 紙 で あ る」 K 中 谷 宇 吉 郎 の 最 有 名 な 名 言。 著 書『雪』 (1938) お よ び 多 数 の 随 筆 で 繰 り 返 し 用 い ら れ た。 雪 の 結 晶 を 観 察 す れ ば、 そ れ が で き た 上 空 の 気 象 (温 度 ・ 湿 度) が 読 み 取 れ る ─ つ ま り「天 か ら 地 へ の 通 信」 だ と い う 詩 的 表 現。
- 人 工 雪 (じ ん こ う ゆ き) K 中 谷 が 1936 年 北 大 理 学 部 低 温 室 で 世 界 初 め て 作 製 し た 雪 の 結 晶。 ウ サ ギ の 毛 を 核 と し て、 温 度 ・ 湿 度 を 制 御 し て 結 晶 を 成 長 さ せ た。 こ れ に よ り、 雪 の 結 晶 の 形 と 気 象 条 件 の 関 係 が 実 験 的 に 確 立 さ れ た。
- 「ナ カ ヤ ダ イ ヤ グ ラ ム」(Nakaya Diagram) K 中 谷 が 確 立 し た、 雪 の 結 晶 形 と 気 象 条 件 (温 度・水 蒸 気 量) の 対 応 関 係 図。 国 際 雪 氷 学 界 で「中 谷 の 図」 と し て 認 め ら れ、 現 代 で も 気 象 学 ・ 雪 結 晶 学 の 基 本 と し て 使 わ れ る。
- 寺 田 寅 彦 と の 関 係 (て ら だ と ら ひ こ と の か ん け い) K 中 谷 は 東 京 帝 大 で 寺 田 寅 彦 の 弟 子。 寺 田 か ら「日 常 の 不 思 議 を 観 察 す る」 姿 勢 を 学 び、 そ れ を 雪 ・ 氷 ・ 気 象 の 研 究 に 結 晶 さ せ た。 本 サ イ ト の 寺 田 教 材 (茶 碗 の 湯 ・ 線 香 花 火 等) と 系 譜 関 係。
考えてみよう
- 「雪 は 天 か ら 送 ら れ た 手 紙 で あ る」 と い う 名 言 が、 比 喩 で あ る と 同 時 に 科 学 的 真 実 で も あ る 理 由 を 説 明 し ま し ょ う。
- 中 谷 が 1936 年 に 世 界 で 初 め て 人 工 雪 を 作 っ た こ と の 意 義 を 考 え ま し ょ う。
- 「雪 と 人 生」 と い う 題 か ら、 自 然 観 察 と 人 生 観 を ど う 結 び 付 け ら れ る で し ょ う か?
- 君 が 住 む 地 域 の 雪 (も し く は 雨 ・ 風 等) を 観 察 し、 そ こ か ら ど ん な「天 か ら の 手 紙」 を 読 み 取 れ そ う で す か?
指導要領との対応
このページは、文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」理科 第2学年の 以下の指導事項を意識して編集しています。
- 中2理科 — 天 気 ・ 気 象 と 自 然 ・ 人 間 の 関 係 を 学 ぶ
※ 文部科学省告示の本文ではなく、編集者による要旨の言い換えです。 正確な指導事項は文部科学省の公式資料を参照してください。
指導案 教員向け・授業展開の例
中2 理 科「気 象 と 自 然」 単 元 で、 雪 結 晶 研 究 の 第 一 人 者 中 谷 宇 吉 郎 を 学 ぶ。 本 サ イ ト 中 1 編 (chugakurika1/yuki) と 並 ぶ 中 2 編 と し て、 思 想 ・ 自 然 観 を 深 め る。
指導目標
- 中 谷 宇 吉 郎 の 業 績 を 知 る
- 雪 結 晶 と 気 象 の 関 係 を 理 解
- 自 然 と 人 間 の 関 係 を 考 え る
授業の流れ
- 10分 中 谷 の 略 歴 ・ 寺 田 寅 彦 と の 関 係
- 15分 「雪 は 天 か ら の 手 紙」 の 意 味 を 議 論
- 10分 ナ カ ヤ ダ イ ヤ グ ラ ム を 紹 介
- 10分 自 分 の 地 域 の 気 象 を 「手 紙」 と し て 読 む
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出典・ライセンス
- 原文: 中谷宇吉郎 (なかや うきちろう)「中 谷 宇 吉 郎『雪 と 人 生』 ─ 雪 を 通 し て 自 然 と 人 を 考 え る」(1956年)
- 入力テキスト: 青空文庫 / 中谷宇吉郎『雪と人生』 (底本:中 谷 宇 吉 郎『雪 と 人 生』(昭 和 31 年・1956 出 版『雪 と 人 生』 所 収)。 北 海 道 大 学 教 授 ・ 雪 結 晶 研 究 の 第 一 人 者。 本 サ イ ト chugakurika1/yuki (中 谷『雪』) 既 出 教 材 と 並 ぶ、 自 然 と 人 間 の 関 係 を 考 え る 随 筆。)
- 原文の権利: パブリックドメイン
- 編集・語注・発問・解説: CC BY 4.0 © project_procopios contributors