指導案:ペリクレスの葬礼演説 — トゥキディデス『戦史』より
| 学校段階・教科 | 高等学校 世界史 第1学年 |
|---|---|
| 所要時間 | 2 単位時間 |
| 本文の目安時間 | 約 35 分 |
| 学習指導要領 |
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| 準備物 |
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単元概要
西洋思想・西洋政治史の出発点に置かれる、紀元前5世紀末のアテナイ民主政の自己定義の演説。トゥキディデス『戦史』第二巻第35〜46章。リンカーンのゲティスバーグ演説、現代アメリカの「都市の上の輝ける丘」言説、戦後日本の憲法前文など、後世の民主政演説の源流とされる。 本教材では、(1)英訳と日本語訳の併読、(2)アテナイ民主政の構造、(3)演説の歴史的背景、(4)女性・奴隷を排除した民主政という現実、(5)演説の翌年の疫病と崩壊、を順に扱う。高校世界史探究・歴史総合の中核教材として、「民主政」概念の歴史性を考えさせる。
本時の目標
- 古代アテナイ民主政の自己定義を、原文 (英訳) と日本語訳で読む
- ペリクレスというアテナイ民主政の象徴的指導者を学ぶ
- 演説のレトリックと、トゥキディデスという歴史家の方法を理解する
- 「世界最初の民主政」の理想と限界を、現代の私たちの民主主義と比較しながら考える
授業の流れ
| 時間 | 活動 |
|---|---|
| 1時間目 | 演説の英訳と日本語訳を読み比べ。ペリクレスがアテナイの「政体」「市民の徳」「公私のバランス」をどう描いているかを抽出。アテナイ民主政の構造(民会・将軍職・抽選による役職)を共有。 |
| 2時間目 | 演説の歴史的文脈(ペロポネソス戦争初年、翌年の疫病、ペリクレス自身の死)を確認。「世界最初の民主政」が実際は女性・奴隷・在留外国人を排除していた現実と、それでも本演説が後世に与えた影響を批判的に考察。リンカーン演説との比較で、民主政演説の系譜を確認。 |
発問・話し合いの軸
- 「我らの政体はデモクラチアと呼ばれる」というペリクレスの宣言は、世界史上で最も早い「民主政自己定義」とされます。しかし2,500年後の今日、デモクラシーの内実は当時とどれほど変わったでしょうか。あなたの考えを述べましょう。
- アテナイの「自由市民」は成人男性のみで、人口20〜30万人のうち4〜5万人にすぎませんでした。残りは女性・奴隷・メトイコイ(在留外国人)として政治から排除されていた。それでも「最初の民主政」と呼べるのか、考えてみましょう。
- ペリクレスは「貧しさを恥じるのは悪だが、貧しさから脱しようとしないことこそ恥である」と語ります。これは古代の労働倫理ですが、現代の格差社会において、この命題はどう響くでしょうか。
- トゥキディデスは演説を「再構成」したと明言しています。歴史的「真実」とは、起こったことそのものか、それともそれを記録者がどう理解し伝えたかか。ヘロドトスとの歴史家としての姿勢の違いも興味深い。
- 本演説の翌年、アテナイはペロポネソス戦争中の疫病で壊滅的な被害を受け、ペリクレス自身も死去します。そして27年の長い戦争の末、前404年に降伏。「黄金時代の絶頂で語られた自己讃美」と「その直後の崩壊」をどう結びつけて読むべきでしょうか。
発展課題
- トゥキディデス『戦史』第三巻のミティレネ討論を読み、アテナイ民主政の暗黒面(軍事的拡張・帝国主義)を学ぶ。
- プラトン『ソクラテスの弁明』を読み、同じアテナイで民主政が哲学者を死刑にした事実を考察。
- リンカーン「ゲティスバーグ演説」(1863) の原文・訳を読み、本演説との対応関係(演説の構造、戦没者追悼、民主政の自己定義)を分析。
- 古代ギリシアの女性の生活(クセノフォン『家政論』など)を学び、「市民」から女性が除外されていた現実を考察。
- ペロポネソス戦争を題材としたヴィクター・デイヴィス・ハンソン『戦争 戦士たちの理由』など現代の研究書を読む。
教師控メモ
生徒の反応・気づき
時間配分の振り返り
次回への改善点