指導案:教育ニ関スル勅語(教育勅語)— 1890年の理念と1948年の失効
| 学校段階・教科 | 中学校 公民 第3学年 |
|---|---|
| 所要時間 | 3 単位時間(重点的に扱う場合)/1〜2 単位時間(資料学習として扱う場合) |
| 本文の目安時間 | 約 35 分 |
| 学習指導要領 |
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| 準備物 |
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単元概要
教育勅語は、戦後日本の教育のなかで長らく「触れない」「ほぼ取り上げない」教材だった。しかし、2017年以降、政府答弁で「教材として用いることは否定されない」とされ、扱いに議論がある。本教材は、史料批判の対象として読むという公民教育・歴史教育の正攻法に立ち、原文と1948年の国会決議の両方を一次史料として提示する。ねらいは「教育勅語は良いか悪いか」を二者択一で答えさせることではなく、「ある文書が58年間日本の教育の根本指針とされ、なぜ国会の両院決議で否定されることになったのか」を、歴史的経過と憲法の構造変化のなかで、生徒自身が考えるための材料を提供すること。
本時の目標
- 教育勅語の全文(315字)を、当時の表記のまま読み、語注をたよりに意味をつかむ
- 「個人徳目」と「国体観念」が一つの文書のなかで結びついていた構造を理解する
- 1948年に国会が「排除」「失効確認」を決議した理由を、日本国憲法との関係から考える
- 戦前と戦後の教育観の違いを、歴史的経過のなかでとらえる
- 「過去の文書をどう読むか」という、史料批判の基本的な姿勢を身につける
授業の流れ
| 時間 | 活動 |
|---|---|
| 1時間目 | 教育勅語の全文を、語注を頼りに音読する。漢文調が苦手な生徒には現代語訳併記を促す。文書を冒頭(国体宣言)・中盤(徳目)・末尾(国家動員)の3パートに分けて構造を把握させる。 |
| 2時間目 | 列挙される14個の徳目(孝・友・夫婦相和・朋友相信・恭倹・博愛・修学・習業・智能啓発・徳器成就・公益・遵法・義勇奉公)を表に整理。生徒自身が「現代でも通用するもの」「戦前固有のもの」「両義的なもの」に分類する。「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」を取り上げ、これが日中戦争・太平洋戦争でどう動員されたか、教科書・資料集と照らす。 |
| 3時間目 | 衆議院「教育勅語等排除に関する決議」と参議院「教育勅語等の失効確認に関する決議」(ともに1948年6月19日)を提示。なぜ「排除」と「失効確認」で表現が違うのか、両院の議事録抜粋から考える。日本国憲法(前文+第1条)、教育基本法(前文+第1条)と比較し、「臣民」から「国民」「個人」への転換を整理。 |
発問・話し合いの軸
- 教育勅語の徳目(特に親孝行・友愛)には、儒教思想に根ざした普遍的な価値を含む部分があります。一方で「天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」など、明治憲法の天皇主権体制と不可分の部分が文書の骨格をなしています。部分を抜き出して「これは良い」と評価することは、歴史的文脈の切断につながるか、それとも妥当な読み方か、議論しましょう。
- 戦前に教育勅語を「奉読」させられた世代(生徒の祖父母・曾祖父母世代)の体験談を、もし聞ける機会があれば、ぜひ聞いてみましょう。実際にそこで暮らした人にとって、それはどんな体験だったのでしょうか。
- 「個人徳目に良いところはあるか」という問いと、「文書全体の構造をどう評価するか」という問いは、別の問いです。両者を区別したうえで、自分はそれぞれにどう答えるかを述べてみましょう。
- 1948年に国会が両院決議で「排除」「失効確認」と表明したことを、現代の私たちはどう受け止めればよいでしょうか。78年の歳月のなかで、この決議の意味は変わったでしょうか。
- 「教育勅語の徳目」と同じ内容を、現代の言葉で、現代の私たちが選び直して書くとしたら、どんな文書になるでしょう。班で一文ずつ持ち寄って、現代版「教育の理念」を書いてみましょう。
発展課題
- 大日本帝国憲法(1889年)の第1条〜第4条(天皇主権の規定)と、教育勅語を読み比べる。
- 福沢諭吉『学問のすゝめ』初編と教育勅語を読み比べ、18年の隔たり(1872 → 1890)の意味を考える。
- 1948年の衆議院・参議院両決議の全文(国立国会図書館のデジタル史料)を原文で読む。
- 戦前の奉安殿の写真や、奉読式の映像資料があれば見て、戦前の学校の「教育勅語」の空気を体感する。
- 教育基本法(1947年制定/2006年改正)の改正前後を比較し、何が変わったかを確認する。
教師控メモ
生徒の反応・気づき
時間配分の振り返り
次回への改善点